季節(トキ)の硲で…

小さな庭を眺めながら 徒然なるままの独り言…しばしおつきあいいただければ幸いです

立夏物語






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風に蜜柑の花が薫る午後
君は わたしの膝に凭れて
生真面目な眸をして 言った


みぃちゃん
大がお山に帰っても
泣いたらあかんよ


なんて 生意気なことを
言うようになったんだろ


去年だって 一昨年だって
帰りたくない って泣いたのは
君の方なんだよ?
みぃちゃんちの子になる って
わたしにしがみついたでしょ?


去年の夏に遊びに来た時
なんて言ったか覚えてる?
君は 玄関に飛び込むなり
みぃちゃん 大とフリンしよ!! って
叫んだんだよ?
そもそも フリン って言葉の意味
わかっちゃいないでしょうけど
大のお嫁になって って
何度も言ったじゃない


それなのに


恋敵のはずのわたしの旦那さまと
いつの間にか 男同士の会話 弾ませて
ふた言めには みぃちゃんには ナイショ


そうして 気がつけば
抱き上げるには重すぎるくらい
大きくなっちゃったんだね
6歳の誕生日 過ぎたんだものね
ふくふく柔らかだったほっぺたも
すっかり男の子らしくなって


別れの日にも きっと
君は 泣かない


でも 覚えていてね


君は この町で生まれたの
さくらの木が 若葉に萌える 晩春の朝
わたしは 生まれたばかりの君を
君が大好きなおとうさんから
抱っこさせてもらった


そうして 君に名前をつけたの


君のおかあさんはベッドの上から
とても誇らしげに君を見ていた
君のおとうさんは目を潤ませて
君のほっぺたを愛おしそうに触った
わたしは 大切な友達のふたりから
君の もうひとりの親に
名付け親にしてもらったの


だから 君がどんなに大きくなっても
その足で どんどん駆けて行っても
どんなに遠く離れても
わたしはいつだって
君を見ている


お嫁さんになるよりも
ずっとずっと深い想いで
君を みつめてる


忘れないでね


わたしはいつだって 君の味方
世界中を敵に回したっていい
わたしは 君の味方だから


立夏を過ぎて 風は緑に染まる
卯の花が零れるように咲いて
時鳥の澄んだ声が
朝の空気を震わせる
一年でいちばん明るい季節
君は 大好きな家族と一緒に
ふるさとのお山へ 帰る
賑やかだったわたしの家は
淋しくなってしまうけれど


March winds and April showers bring forth May flowers


3月の風と4月の驟雨(アメ)が
花盛りの5月を連れてくるように
長くて淋しい冬を頑張って過ごした
君と 君の小さな妹には
何よりもしあわせなこと
大好きな家族が揃って
5月の 美しい翠に包まれた
あの お山の家に帰れるんだから


君が泣かないなら
わたしだって 泣かない


君のおとうさんとおかあさんに出会って
君が生まれて
君の妹が生まれて
わたしは 明日を
信じられるように なった
未来(アス)を待つことが
辛くない って思えるようになった


またね って笑って言えるよ


いつか 君がわたしを思い出す時
わたしがどんなにしあわせだったか
わかってもらえたら
とても とてもうれしいです


















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